国外犯規定

 

航空技術の進歩により、海外旅行は我々にとって非常に身近なものとなりました。

現在では修学旅行で海外に行く学校も増えておりますし、もはや我が国では、一度も外国に行ったことのない方を探す方が難しい状況ともなっているでしょう。

しかしながら、世界には日本よりも治安が悪い国が多くありますし、我々日本人の中にも旅行の開放感からついつい羽目を外し過ぎてしまう方もおられますから、「海外で警察のお世話になる」というケースも時折耳に致します。

そして、海外で犯罪に巻き込まれた際や、罪を犯してしまった場合に問題となって来るのが、国外犯規定なるものです。

そこで本日は「国外犯規定について解説致します!」と題して、外国での犯罪についてお話をしてみてたいと思います。

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国外犯とは?

冒頭にて「国外犯」という耳慣れない言葉が出て参りましたので、まずはこの用語の意味からご説明して参りましょう。

我が国の国内にて何らかの犯罪が行われた場合には、当然ながら日本の法律によって犯人は裁かれることとなります。

そして、こうした犯罪のことを法律的には「国内犯」と呼んでおり、この言葉の対になるのが「国外犯」なる言葉です。

そもそも日本の刑法は、原則として国内犯に関して定められた法律であり、もし日本人が海外で犯罪を行った場合には、その国の法律で罰せられるのが通常なのですが、

一部の犯罪については例外的に「例え海外で行われた犯罪であっても日本の法律が適応される」という特別ルールが定められており、これこそが国外犯規定と呼ばれるものとなります。

よって、行った先の国では犯罪に当たらない行為であっても、それが帰国後に明るみに出れば、日本の司法によって裁かれるという事態が発生し得る訳です。

なお、国外犯規定は刑法の2条~4条、その他いくつかの法律に定めがなされていますが、大きく分類すると3つの累計がありますので、事項ではこの3類型を解説して参ります。

国外犯規定の3類型

では早速、国外犯規定の3類型を見て行きましょう。

全人類に適応される国外犯規定

刑法の第2条定められているのが、国籍や場所を問わず人類全員に適応される国外犯規定となります。

よってここで規定されている犯罪は、アメリカ人が中国で行ったことでも、日本の法律が適応されることになるのです。

そしてこんなお話をすると「そんな凄い犯罪って何?」とお思いになられることと思いますが、例えば「日本で内乱を起こしてやる!」なんて計画を準備していた場合や、日本円の偽札作り等がこれに当たります。

日本人が海外で犯罪を行った場合の国外犯規定

続いてご紹介するのが、日本人が海外で罪を犯した場合に適応される国外犯規定となります。

こちらは主に刑法の第3条に規定されているもので、殺人や傷害、窃盗や強盗などが対象です。(詳しくは後述します)

但し、賭博罪などは対象外となりますから、海外の公営カジノなどでギャンブルを行っても、日本で逮捕されることがないのは、この国外犯規定によるものとなります。

なお、現地の法律に違反した場合は当然その国の法律で裁かれることになりますから、ギャンブル禁止の国で闇賭博などを行った場合には、日本の法律で裁かれなくても、現地の法律で罰を受けることになるでしょう。

海外で日本人が被害者となった場合の国外犯規定

世界は私たちの想像以上広いものですから、日本ではあり得ない様な法律がまかり通っている国だってあるものです。

しかし、それが現地のルール(法律)だからといって、日本人が被害者となったにも係わらず「何も出来ない」なんていうのはあまりに不条理ですよね。

そこで刑法の第3条2項では、海外で日本人を対象に行われた犯罪について、一定のものには日本の法律を適応するルールを設けています。

例えば殺人や傷害、強制わいせつなどは、例えその国の法律で合法でも、犯人は日本の法律で裁かれることになるのです。

その他にも、逮捕監禁、強盗、誘拐などが、この規定の対象となります。

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国民の国外犯について

ここまでの解説で、国外犯規定の概要や類型についてはご理解頂けたことと思いますが、やはり最も気になるのは自分が外国で罪を犯してしまった場合のお話ですよね。

そこで本項は、「日本人が海外で犯罪を行った場合の国外犯規定」の内容をより詳細に見て行くことにしましょう。

放火等に関する犯罪

放火は言うまでもなく重大な犯罪となりますから、未遂も含めて例え海外でのことでも、日本の刑法が適応されます。

また、建物を水浸しにする現住建造物等浸害罪も同様の扱いとなりますから、これらの行為は決して行わない様にしましょう。

書類の偽造等に関する犯罪

近年ではビジネスで海外に赴く方も少なくありませんが、書類の偽造などは国外犯規定となります。

よって私文書偽造等に虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使に私印偽造及び不正使用等は、全て日本の法律によって裁かれるのです。

性犯罪に関する犯罪

我が国の刑法では、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪等の性犯罪についても国外犯規定と定めています。

なお、児童買春・児童ポルノ禁止法においても国外犯規定を設けていますから、この法律に違反する行為は海外であっても罰せられることになるでしょう。

結婚や出産に関する犯罪

海外では一夫多妻制の国も存在しますが、日本の法律は例え外国においてでも日本人の重婚を禁じています。

また、不同意堕胎罪なども国外犯規定となっています。

殺人・傷害に関する犯罪

これは当然のことかもしれませんが、殺人罪や傷害罪も国外犯規定の範疇となります。

泥棒や詐欺に関する犯罪

そして傷害がアウトなら、強盗ももちろん国外犯規定となるはずですし、窃盗や昏睡強盗など泥棒行為に関する多くの罪も日本の法律が適用されることになります。

更には、詐欺・電子計算機使用詐欺・背任・横領等、詐欺に関する罪も同様です。

また、未成年者略取及び誘拐や営利目的等略取及び誘拐など、誘拐に関わる多くの犯罪も日本の法律にて罰せられます。

その他の犯罪

では最後に、これまでご紹介出来なかった国外犯規定となる犯罪を一気に見て行きましょう。

  • 臓器売買
  • 恐喝
  • 地雷や化学兵器の所持・製造
  • 名誉棄損
  • 防衛に関する秘密の漏洩

これらの罪は全て国外犯規定となっているのです。

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国外犯規定まとめ

さてここまで、国外犯規定について解説を行って参りました。

お読みになって頂ければお解りのことと思いますが、我が国の法律は例え海外であっても、人の道に反する多くの行為を国外犯規定と定めているのです。

なお海外で犯罪を行った場合には、まずその国の警察に逮捕され、現地の法律によって罰せられるなるでしょう。

そして外国の刑務所を出所し、帰国した際には、再び日本の法律によって裁きを受けることになります。

但し、判決においては海外で受けた刑の重さも考慮されますから、2倍の罰を受けるなんてことにはならない様です。

海外旅行は思わず心浮き立ってしまうものですが、日本人としての誇りを常に持ち、節度ある行動を執って頂ければと思います。

ではこれにて、「国外犯規定について解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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