テレビやラジオにて、「過払い金」や「クレイゾーン金利」という言葉を耳にされたことがあるかと思います。
主に弁護士事務所や司法書士事務所などの広告で見聞きする、これらの用語ですが、「一体何のことやら・・・」と思っておられる方も多いはずです。
また、過去に借金をした経験がある方にとっては「払い過ぎた金利が返って来るのは嬉しいけど、CMで言うような成果が本当に上げられるの?」といった疑問や、「過払い金請求をすることによるリスクは無いのだろうか?」という不安を感じている方もおられることと思います。
そこで本日は「過払い金請求とは?という疑問にお答えします!」と題して、クレイゾーンや過払い金に関する事項を解説してみたいと思います。
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大きく改正された借金関連法令
今を去ること十数年前の2006年頃、ニュース番組などでは「ある問題」がしきりに取り沙汰されていました。
それは所謂、消費者金融と呼ばれる貸金業者の苛烈な取り立てや、これを苦にして自ら命を絶った方々に関する報道であり、当時の放送では「督促時の生の音声」なども流されていたため、その強烈なインパクト故に『未だに記憶に焼き付いている』という方もいらっしゃるはずです。
やがてこの問題は国会でも大きく取り上げられることとなり、高金利で貸出しを行う貸金業者に対して、様々な法規制が行われる事態に発展して行くのでした。
なお、こうした借金によるトラブルが数多く発生した背景には、当時の貸金関連法令の抜け道の多さに大きな原因があったと言われています。
グレイゾーン金利とは?
我が国でお金の貸出しが行われる場合には、「出資法」や「利息制限法」などの法律によって、利息等について様々な制限が課せられるルールになっています。
現在では法整備も進んで、これらの法令の抜け穴も殆ど塞がれた状態となっていますが、改正以前の出資法が定める利息の上限は年利29.2%という高金利に設定されていました。(出資法の上限利息違反には懲役や罰金の罰則あり)
また、もう一つの利息制限法においては当時から既に厳しい金利の上限(貸付金額によって15~20%)が設けられていたのですが、驚くべきことにこの利息制限法には違反しても罰則が存在しなかったのです。
よって貸金業者にしてみれば利息制限法というルールこそあるものの、これに違反しても罰はありませんから、実際は出資法上限の年利29.2%以下にさえ金利を抑えれば、自由にお金を貸し出すことが可能という状態が続いていました。
なお、利息制限法には違反しているものの、出資法には違反していない範囲の金利は「グレイゾーン金利」と呼ばれる様になり、世間で大いに物議を醸し出すことになって行くことになります。
そして「法律の抜け穴を利用して、高利でお金を貸出すのはけしからん!」という世論が高まって行く中、遂に政府も重い腰を上げることとなり、2006年~2010年に掛けて借金関連法令に大改革が行われることになったのです。
過払い金とは?
さて、この法改正において最も大きな変更点となったのが、出資法の上限金利年利であった「29.2%」を「20%まで引き下げる」という内容です。
前項の解説にて利息制限法の上限金利は15~20%とお話しましたが、更に詳細にご説明すると
- 元本10万円未満 ・・・上限金利20%
- 元本10万円以上~100万円未満・・・上限金利18%
- 元本100万円以上 ・・・上限金利15%
という規定になっていますから、出資法の上限を20%に引き下げたことにより、グレイゾーン金利(出資法上限金利と利息制限法上限金利の差)は大幅に圧縮されたことになります。
※元本10万円以上~100万円未満の借入で2%、元本100万円以上では5%という若干のグレイゾーンは今でも存在する理屈となりますが、グレイゾーンでの貸付けは条例によって罰則が設けられましたので、現実に貸出しが行われることはないでしょう。
また、貸金業法という法律では、貸出しの際に一定の条件が揃うことで利息制限法の上限金利以上での貸付けが有効という特例制度(みなし弁済規定)もあったのですが、こちらも合わせて廃止となりました。
但し、ここで気になるのが「では法改正前にグレイゾーン金利として貸し出された金利分はどのように扱うか?」という問題でしょう。
この点に対して法律は「グレイゾーン金利は法律に反した金利なのだから、そもそも無効であり、これによって利益を得た貸金業者はそのお金を利用者に返還するべきだ」との判断を下したのです。
こうした法改正の経緯を経て、「過払い金請求」という新たな観念がこの世に登場することとなりました。
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過払い金請求
こうして誕生した「過払い金が請求出来る権利」ですが、例え過去にグレイゾーン金利でお金を借りていたとしても、金融会社の方から『返すお金がありますよ!』なんて連絡をしてくれるものではありません。
原則として過払い金は、借りていた側が貸金業者に対して、支払いを請求する性質のものとなります。
なお過払い金が発生している可能性があるのは、2010年6月までの期間に貸金業者から借入を行った方となるでしょう。(法改正自体は2006年から始まりましたが、整備が完了したのは2010年であるため)
但し、あくまで高過ぎた金利を利息制限法の15~20%の金利に計算し直しての精算となりますから、既に完済が完了している方ならともかく、現在でも借金がある方は、残債務が減額される程度の効果に止まるでしょう。
また、一般の方が正面から「過払い金を返して欲しい」と申し出ても、なかなか応じて貰えないケースも多いので、請求に際しては弁護士や司法書士の力を借りるのが一般的です。
因みに、弁護士等が交渉に臨んでも過払い金の返還が行われない場合には、過払い金の返還を求める訴訟を起こすしかないでしょう。
過払い金請求のデメリット
ここまでの解説を聞くと、過払い金請求に関して「請求する側」にはデメリットが無いように聞こえてしまいそうですが、それなりの問題点もあるものです。
まず一番の問題が、過払い金には時効が適用されますから「完済から10年」または「最後の取引から10年」が経過すると、請求の権利自体を失ってしまうことでしょう。
また既に多くの過払い金請求を受けた貸金業者の中には、倒産している企業も少なくありませんし、会社が存続していても支払い能力がないところも多い模様。
更には、弁護士などに依頼しての過払い金の交渉は、借金整理の一手段である任意整理と同義に解釈され、所謂金融ブラックリストに依頼者の名前が載せられてしまい、新たな借り入れが不能になるといったケースもある様です。
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過払い金請求とは?まとめ
さてここまで、「過払い金請求とは何なのか?」というテーマで解説を行って参りました。
テレビやラジオのCMで頻りに叫ばれている「過払い金」や「グレイゾーン」と言った用語ですが、その意味が詳しく説明されることは滅多にありませんので、本記事にてその本質をご理解頂ければ幸いです。
また、これから過払い金の請求に臨もうという方には、依頼を行う弁護士や司法書士の先生をじっくりと精査することをお勧め致します。
決して数は多くないようですが、法外な報酬を請求して来る先生もおられる様ですから、この点だけはご注意下さい。
ではこれにて、「過払い金請求とは?という疑問にお答えします!」の記事を締め括らせて頂きます。
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