公職選挙法違反

 

近年、急激に熱を帯び始めているのが、選挙に関する話題となります。

投票率は相変わらず高いとは言えませんが、こうした状況に反して、世間からの注目度は時を追うごとに増している様で、投票日にはテレビの特番から目が離せないという方も多いことでしょう。

しかしながら、選挙戦が熱を帯びれば帯びる程に、報道されることが多くなるのが選挙違反に関するニュースとなります。

また一言で選挙違反と言っても、昔からお馴染みの賄賂に関するものから、演説の妨害、SNSの利用法に至るまで、その内容は多岐に渡りますから、一般の方からすれば「それが選挙違反に当たるか、否か」の判別が付かないことも多いことでしょう。

そこで本日は「公職選挙法違反について解説致します!」と題して、選挙違反に関するあれこれを解説してみたいと思います。

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公職選挙法とは?

冒頭にて「選挙違反には様々な種類が存在する」と申し上げましたが、こうした違反行為を規定している法律が「公職選挙法(公選法)」と呼ばれるものです。

誰もが一度は耳にしたことがあるであろうこの法律名ではありますが、その内容に精通しているという方は意外に少ないのではないでしょうか。

そこでまずは、「この公職選挙法なるものがどんな内容であるか?」という点から解説をスタートさせて頂きます。

公職選挙法が施行されたのは、戦後間もない昭和25年のことです。

もちろん戦前の法律の中にも、選挙に関する取り決めは存在していましたが、GHQ占領下において、新たなルールが定められることとなりました。

また、公職選挙法というと「選挙違反等を取り締まるための法律」と思われがちですが、その内容は議員の定数から、選挙権(年齢制限など)、選挙区に関する取り決めなども盛り込まれており、正に「我が国の政治を司る法律」ともいえる代物なのです。

但し、ご存じの通り、こうした法律を定めるのは国会議員の仕事となりますから、時には「自分たちに有利な改正を行っている」なんて批判を受けることもあり、

選挙が終わる度に「一票の格差の問題で選挙自体が無効!」なんて訴えが起こされるのは、こうした法の成り立ちが原因となっていると言われています。

なお、全部で17章まであるこの法律ですが、選挙違反に関する事項は主に第5章の選挙期日や、第13章選挙運動に定められてものとなりますので、次項では公職選挙法にてルール違反とされている行為について解説して参りましょう。

 

こんな行為が選挙違反となる!

では早速、選挙違反となる行為を見て行きましょう。

選挙ポスターへのイタズラ

街に貼られているポスターと言えば、人物の顔に髭が描かれていたり、目に画鋲が刺さっていたりといったイタズラをされている光景を目に致しますが、

選挙用のポスターにこうした行為をすれば、公職選挙法225条2項に違反したことになり、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罪に問われることになるでしょう。

なお通常であれば、貼られているポスターを無許可で剥がした場合や、イタズラをしたケースでは、「器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)」となるはずですが、公職選挙法は特別法ですから、こちらの規定が優先されることとなります。

因みに先の衆議院選では、「一般の住宅に無許可で選挙ポスターを貼られた」というトラブルが発生した様ですが、こうした場合には自分で勝手に剥がすのではなく、選挙管理委員会若しくはポスターの候補者が所属する政党にクレームを入れるのが得策でしょう。

また、玄関先にベッタリとポスターを貼られ、自宅の価値が損なわれる様な事態が発生している場合には、反対に家主側から「器物損壊罪」にて告訴が可能となる場合もあります。

 

買収等の行為

こちらも常識的なお話ではありますが、有権者に対する買収なども公職選挙法への違反行為(221条・222条)となります。

「自分が応援する候補者に投票してくれたら、お礼をする」「●万円上げるから、▲▲候補に投票して欲しい」なんて直球の手法はもちろん、選挙運動中に有権者へ飲み物を配ったり、食べ物を振舞ったりすることもNGとなります。

なお、これに違反した場合には3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金となりますし、

候補者自体がこうした行為を行った場合には、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金という更に重いペナルティーを課せられでしょう。(但し、飲食物の提供(第243条)は2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金と若干罪が軽い)

更には、複数人に対して組織的な買収や利益誘導を行った者には5年以下の懲役又は禁錮(候補者本人等が行った場合は6年)という罰が待っています。(買収された側も罪に問われます)

因みに選挙における利害誘導については、会社などにおける「●●党を応援しないと出世させないぞ!」なんて圧力系のパターンも存在するでしょうが、公職選挙法においてはこれを明確に禁じる条文がないのが実情です。

近年の選挙でも「●●党を応援したら取引を止める」なんて脅しがあったというお話を聞きますので、こうした「利」だけではなく「害」に関するルール作りが必要なのかもしれません。

 

事前運動

公職選挙法では、選挙運動が出来る期間も厳格に定められており、公示日(立候補の届け出がなされた日)から、投票日の前日までとされています。

但し、衆議院と参議院、知事・市長など選挙の目的によって期間はバラバラで、主な選挙運動可能期間は下記の通りです。

  • 参議院選挙・・・17日間
  • 衆議院選挙・・・12日間
  • 知事選挙・・・17日間
  • 市長選挙・・・9日間(政令指定都市以外は7日間)

また、「選挙運動」の内容についても明確な定義がされており、

  • 特定の選挙について
  • 特定の候補者を
  • 当選させるための運動

がこれに該当することになりますから、この要件を満たすものは「選挙期間中にしか出来ない行為」となります。

そしてこれに違反した場合には、1年以下の禁固または30万円以下の罰金(第239条)というペナルティーを課されることになるのです。

 

戸別訪問の禁止

前項にて、「選挙運動がどの期間に行えるか?」についてはご理解頂けたことと思いますが、期間内でも禁止されている行為は多々あります。

そして、禁止行為の代表例とも言えるのが個別訪問であり、公職選挙法では不特定のお宅を訪問して投票のお願いして回る行為を禁止しているのです。

なお、これに違反した場合には1年以下の禁固または30万円以下の罰金(第239条)に処せられることになりますが、電話での勧誘は認められているなど、抜け道も多数存在しているのが実情でしょう。

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選挙カーに関する規定

投票日が近付いて来ると、選挙カーにて大きな声を張り上げている候補者をよく見掛けますが、ここにも厳格なルールが存在しています。

まず原則としてですが、衆議院・参議院共に1人の候補者に対して、使用できる選挙カーは1台(拡声器も一揃えのみ)までです。

但し、比例代表の議員の場合は2台まで許されていたり、政党単位で候補者の数が一定数を上回れば、更に追加が可能であったりと多くの特例も存在しています。

また、自動車以外にも船の利用も許可されていますが、あまりお目に掛かることはないでしょう。

因みに、選挙カーにおける選挙活動自体にも多くの制約があり、乗り込めるのは4人までな上、停車中以外は演説禁止となっています。

こんなお話をすると、「演説しながら走っているのを見たことがある!」という方も多いでしょうが、厳密に言えばこれは違反行為と言えるでしょう。

但し、移動しながら候補者の名前を連呼することは禁じられていませんから、名前を叫ぶだけなら問題はありません。

 

選挙演説に関するルール

駅前などで行われる選挙演説にもルールが存在します。

まず時間ですが、朝8時から夜の8時までとの規定があり、走行中の選挙カーとは逆に議員の名前を連呼する行為は禁止されています。

また学校や病院など近辺では、大音量の選挙演説は出来ません。

更には応援演説に公立学校の教師等といった公務員を起用したり、小さな子供(未成年者)を使う行為も禁止されています。

 

演説を聞く側のルール

演説をする側にルールがあるなら、これを聞く側にもルールが存在します。

演説を行う候補者が気に食わないからと言って、これを妨害した場合には4年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金に処せられることになるでしょう。

また、集団で演説を妨害する様なケースでは、更に重いペナルティーが用意されており、首謀者には1年以上7年以下の懲役または禁錮、率先して妨害を行った者には6ヶ月以上5年以下の懲役または禁錮、そして参加しただけでも20万円以下の罰金となりますから、こうした行為を目撃した場合には速やかに警察に通報しましょう。

 

インターネットを利用した選挙活動

最近の選挙報道などは見ていると「●●候補はSNSを上手に活用していた・・・」なんてコメントを耳にしますよね。

実は少し前まで、インターネットを活用した選挙運動は原則「禁止」となっていました。

しかし、スマホ全盛の今の世の中でこれを活用出来ないのは「時代にそぐわない」との声を受け、平成25年よりインターネット上での運動が解禁されることとなったのです。

但し、公職選挙法ではネットの活用についても細かな規制を設けており、一般の方がメールにて「●●候補に投票して下さい!」と呼びかけることは禁止となっています。

なお、ブログやフェイスブック、ツイッタ―等への投稿、YOUTUBEなどに応援動画をアップすることは問題ありませんので、ご興味のある方は是非ともチャレンジしてみて下さい。(但し、ホームページを印刷して配布する行為は不可)

また、応援は問題ありませんが、特定の候補者を批判する様な内容の投稿は、自分のメールアドレス等を表示する義務がありますので、この点にはご注意を頂ければと思います。(選挙期間中のみ)

因みに、候補者本人や所属政党がメールを利用して選挙活動を行うことは違反行為となりません。

 

選挙に嘘は厳禁

選挙に出馬する以上は「何が何でも当選したい」と考えるのが当たり前ですが、選挙活動に嘘は厳禁です。

よって、応援する候補者に有利となる嘘の情報(ハーバード大を卒業した等、嘘の情報)を流した者は、2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金という処罰を受けることになります。

また、当選して欲しくない候補者に対して、不利となる情報(不倫している、脱税している等)を流した場合には、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金という更に重い罪に問われることになりますから、これは絶対に避けるべきです。

 

投票所でも禁止行為が!

そして、選挙の総仕上げとも言えるのが投票ということになりますが、ここでも公職選挙法は様々な規制を課しています。

まず投票所において、特定の候補者の名前を書いたポスターなどを掲示した者には、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金というペナルティーが与えられ、無断で投票箱を開けた者には3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金という重い罪に問われることとなるでしょう。

また、投票所にナイフや鈍器を持ち込んだだけでも、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金となります。

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公職選挙法違反まとめ

さてここまで、選挙違反に関する様々な事例について解説を行って参りました。

なお読者の方の中には、「この記事で紹介した様な違反行為を見たことがある!」という方も多いことと思います。

実は選挙が行われる度に、公職選挙法に違反する候補は後を絶たず、その多くがこれを咎められることのないまま政治の舞台に立っていたりするのが現実なのです。

しかしながら、政治の世界は他の何処よりも「誠実さ」と「勤勉さ」が求められる場所ですから、候補者の不正に気付いたならば、速やかにその過ちを指摘することが国民の義務なのではないでしょうか。

ではこれにて、「公職選挙法違反について解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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