夜店・屋台

 

お祭りに盆踊り、そして初詣など、我が国のイベントに欠かせないものと言えば「屋台」ですよね。

昔ながらの「お好み焼き」や「たこ焼き」の屋台は未だに根強い人気を博していますし、近年では「クレープ」や、流行の「ご当地グルメ」などを提供する変わり種の店舗も増えている様です。

そして、こうした夜店を目にすると「思わずお財布の紐も緩んでしまいがち」ではありますが、

フッと冷静になってみると「この屋台の人たちを信用しても良いのだろうか?」「しっかりと法律に則った営業をしているのか?」なんて疑問も湧いて来ますよね。

そこで本日は「夜店・屋台の法律問答をお届け!」を出して、縁日の主役である屋台にまつわるアレコレにスポットを当ててみることに致しましょう。

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夜店や屋台って何だろう?

ではまず最初に、「そもそも夜店や屋台って何なんだろう?」という点から解説を行って参りましょう。

皆様もご存じの通り、お祭りや盆踊りなどで軒を連ねているのが屋台や夜店となりますが、その歴史は非常に古いものとされています。

時代劇などを見ていても、道端で食べ物や小物を販売している業者の姿は必ず見掛けるものですし、通りで「ござ」を広げるだけで商売が出来る訳ですから、その始まりは『人類が商業活動を始めた時期』にまで遡ることが出来るでしょう。

また、屋台と言えば「縁日(えんにち)」という言葉を思い浮かべる方も多いかと思いますが、本来縁日とは神様や仏様と縁の深い日(降臨した日など)を表す言葉であり、

こうした特別な日には寺社が屋台(的屋)の出店を許可し、その売り上げの一部を「お寺や神社の運営資金の一部とする」という習わしが、古来より行われていた様です。

そして江戸時代ともなれば、町中には多くの屋台が立ち並び、多くの人々は自炊するよりも、屋台で食事を済ませるのが通常であったといいます。

この様に我が国の歴史と深く係っている屋台文化ですが、このお話をする際に避けられないのが的屋(てきや)の存在となるでしょう。

お祭りなどで屋台を構える店の多くが、この的屋によって運営されていますが、警察としては彼らを暴力団の一種として扱っているのが現状です。

厳密に言えば、必ずしも「的屋=暴力団」という訳ではないのですが、的屋が暴力団の協力企業である場合や、何らかの関連性があるケースが殆どとなりますから、こうした扱いを受けてしまうのも致し方ないことなのかもしれません。

※的屋組織の中には指定暴力団の認定を受けている団体も存在します。

更に近年では暴力団排除条例も施行されましたから、彼らの商業活動は厳しく制限されることとなり、お祭りの際にも的屋を呼ばず、町内会自らが屋台を出店するケースが増えているのです。

但し、的屋側もアルバイトに店番を任せることで、条例の規制を回避するなどの手段を講じていますから、まだまだ彼らの姿を目にする機会は多いことでしょう。

道路使用許可の問題

さて、そんな屋台や夜店に関する法律知識を解説して行く訳ですが、まず最初に気になるのが「道路上に屋台を出しても問題にならないの?」という点なのではないでしょうか。

道路には公道・私道などの区別がなされていますが、それぞれの道路にしっかりと管理者が定められています。

公道であれば、市や県、国などが管理者となりますし、私道であれば土地の所有者などが、これに当たるでしょう。

なお私道の場合には、土地の持ち主が許可すれば「それで出店OK」となりそうですが、私道の中には不特定多数が通行に利用しているものもありますから、

こうしたケースでは「例え持ち主が許可したとしても、それだけでは屋台を出すことは出来ない」というのがルールなのです。

そこで必要となって来るのが、道路交通法第77条に定められた道路使用許可となります。

道路使用許可は、該当する地域を管轄する警察署長に対して申請するものであり、道路を通行目的以外で使用する際に必要な許可です。

通常は道路工事などの際に申請されることが多いのですが、神輿の通行や、夜店の開催などにも必要となって来ます。

但し、例え地域のお祭りなどでも、警察としては安全を最優先に考えますから、屋台の配置などによっては許可が下りない場合もありますし、許可が下りても「交通誘導員を置くこと」などの条件が付される場合もあるでしょう。

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食べ物の販売

続いてご紹介するのが、お好み焼きや焼きイカなど、食べ物を扱う屋台の法律問題となります。

縁日などを見て歩いていると、「水道も下水も無いのに、衛生状態は大丈夫なのか?」という屋台を多く目にしますが、食べ物を扱う以上、それなりの手続きは済ませなければなりません。

因みに我が国で飲食店を営業するには、食品衛生法によって定められた「食品衛生責任者」という資格が必要となります。

世間には「飲食店の開業に必要な資格は調理師」との誤解が広まっている様ですが、実際には食品衛生責任者の資格さえあれば、法的には問題がありません。

※調理師資格を持っていれば、食品衛生責任者の資格がなくとも飲食店の開業が可能です。

よって、食品を販売する屋台を「業」として行うのであれば、食品衛生責任者は必須の資格となるのです。(食品衛生責任者の資格取得は一日講習を受け、その後に行うテストに合格すれば取得可能)

但し、大手のメーカーが製造したお菓子をパッケージのまま販売する場合には食品衛生責任者の資格は不要ですし、学園祭など非営利目的のイベントにおいて、期間限定で飲食店を出店するケースでは保健所に営業許可の申請を行うだけで済む場合もあるでしょう。

また、飲食の屋台を出店するなら、調理にガスなどの火気を使用することも多いはずです。

こうしたケースでは消防法の定めに従い、地域を管轄する消防署への届出が必要となりますし、近年では法改正により消火器を備え付けるなどの安全対策を行わなければなりません。

なお、こうした屋台でビールなどの酒類を提供する場合には、酒税法に関する問題も出て来ます。

酒税法では、お酒の販売に関して免許制を執っていますから、例え祭りの期間中のみの販売などでも期限付酒類小売業免許が必要となるでしょう。

但し、お酒を未開封の瓶や缶ごと販売するのではなく、紙コップなどに移して販売するのであれば、この法規制を逃れることが出来ますから、夜店などではこうした法の抜け道を上手に利用しているのです。

この様に、屋台で食べ物を販売するには、それなりの法的なハードルをクリアーする必要がありますが、実際の夜店などでは厳密にルールが守られていないことも多い様ですし、現に食中毒などのトラブルに発展するケースも珍しくありません。

縁日という雰囲気は、食べ物に特別な魅力を与えるものですが、食べる物には充分に注意を払うべきでしょう。

景品を提供する屋台

そして縁日と言えば、輪投げや射的、クジなどの景品系の屋台も忘れてはいけません。

こうした出店の中には、そもそも当たりクジを入れていなかったり、射的の玉で景品が落ちない様に補強がなされているケースもありますが、こうした営業方法は法律上、大きな問題があります。

刑法上、この様な行為が行われていれば、詐欺罪が適応される可能性があるでしょう。(10年以下の懲役)

また民法上で言えば、景品表示法上の問題も出て来るはずです。

一方、お客の側についても不正な方法で景品を取得した場合には罪に問われる可能性があります。

例えば金魚すくいにおいて、捕まえた魚を入れておく器で金魚をすくったり、射的の銃口で景品を落下させるなどの行為がこれに当たるでしょう。

こうした行為が行われれば、窃盗罪が適応される可能性がありますし、質の悪い店主の場合には、更に酷い結末を迎える可能性もあるでしょうから、絶対にこうした不正は行うべきではありません。

なお、金魚すくいにつきましては「動物虐待に当たるのでは?」なんて指摘もありますが、法律上、こちらはセーフだと思います。

こちらに関しては動物愛護法の範疇となるかと思いますが、魚類は適応対象外なのです。(詳細は別記事「動物愛護法について解説致します!」をご参照下さい)

但し、鶏は動物愛護法の保護対象となりますから、「ひよこ釣り」なんて出店があれば罰則の対象となるでしょう。(カラーひよこの場合は、虐待とまで言えるが微妙)

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夜店・屋台の法律まとめ

さてここまで、縁日の出店に関する法律問答をお届けして参りました。

お祭りや盆踊りは日本の風物詩ではありますが、法律的には実に様々なハードルがあるものです。

また、こうした縁日などの売り上げが、暴力団の活動資金となる可能性も否定は出来ませんから、楽しむ側としても少々頭の痛い問題でしょう。

なお、この様な記事を書いておいて「アレ」なのですが、夜店などで少々「問題点」を見付けても、そっと目を瞑る度量もある程度は必要かもしれません。

余りに厳密に突き詰めてしまうと、イベントならではの大らかさや、縁日の風情までもが吹き飛んでしまう気がして、少々寂しい気分になってしまいます。

許せる範囲のことはスルーして、お祭り気分を満喫して頂ければ幸いです。

ではこれにて、「夜店・屋台の法律問答をお届け!」の記事を締め括らせて頂ければと思います。

 

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