生物には、本能的に他の個体と「一定の距離を保ちたい」という欲求がプログラミングされているという説があります。
確かに虫にしろ、熱帯魚にしろ、あまりに多くの個体を狭い空間に閉じ込めておくと、ケンカをしたり、共食いを始めたりすることがありますから、この説にもなる程頷けるものがありますよね。
なお「他の個体とどれだけの距離が必要か?」については、生物によってかなりの差があるとのことですが、私たち人間も生物である以上、他人との距離が近すぎれば、強烈なストレスを感じてしまうことに違いはありません。
しかしながら人口が密集する都心部などでは、どうしても家と家の間隔は狭くならざるを得ませんし、マンション住まいともなれば、壁や天井を挟んだ空間に他人が暮らしている訳ですから、ご近所間の軋轢が生まれてしまうのは無理もないことと言えるでしょう。
もちろん人間は理性のある生き物ですから、互いに気を使い合いながら暮らしていくことで衝突は回避出来るはずですが、世の中にはこうした環境に適応が出来ず、近隣住人に嫌がらせを繰り返す不届き者も多い様です。
そこで本日は「嫌がらせに対処する法律知識をお届けします!」と題して、ありがちな嫌がらせに対する法律問答をお届けしたいと思います。
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嫌がらせに対する法律知識
では早速、具体的な嫌がらせの手法をご紹介しながら、法律的な対策を解説して参りましょう。
騒音被害
世間で繰り広げられる嫌がらせの中でも、その代表格とされるのが騒音被害となります。
近年ではテレビの報道番組などでも、時折騒音で他人の生活を破壊する不届き者の映像が流されますから、その強烈なインパクトが脳裏に焼き付いておられる方も多いはずです。
具体的な手口としては、テレビやラジオの音声ボリュームを最大限に上げて、騒音を撒き散らすというオーソドックスな方法から、大声で怒鳴り続ける、場合によっては拡声器などを用いて嫌がらせに勤しむ場合もある模様。
ではそんな厄介者たちに、法律はどんな罰を与えてくれるのでしょう。
騒音問題に対処する法律には様々なものがありますが、最も基本となるのは騒音規制法という法律になります。
但しこの法律、原則として工場や工事現場の音を規制するために作られたものとなりますから、嫌がらせを行う者に直接対抗するには少々厳しいものがあるのですが、注目すべきは騒音に対して一定の基準を定めているという点でしょう。
騒音規制法では、各行政が独自の騒音基準を設けることを認めており、「相手の出す音が騒音とみなされるか否か」を判断する際には、この法律が基準となるのです。
さて、実際に相手の出す音が行政の定める基準をオーバーしているとなれば、次に振りかざすべきは、行政が定める迷惑防止条例となるでしょう。
条例となると「罰も軽そう」に感じてしまいますが、内容こそ都道府県によって異なるものの、懲役刑から罰金刑まで厳しい刑罰を定めている地域も多いですから、相手にそれなりのダメージを与えることが出来るはずです。
また、相手の騒音により不眠症になったり、鬱病を発症した場合には傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が適応されることもありますし、「殴るぞ!」なんて発言をすれば脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)に問われる可能性も出て来ます。
因みに、軽犯罪法には「公務員の制止を無視して騒音を立ててはならない」との規定がありますから、警察に連絡して注意を促してもうらうのも有効な対策でしょう。(軽犯罪法なら音のレベルに関係なく取締りが可能)
なお、当然「民法上の不法行為責任」を追及することも可能ですから、裁判で勝利すれば賠償金の請求、支払いを拒めば強制執行という手段に出ることも可能です。
投石被害
こちらも近年、増えつつある事例となります。
もちろん面と向かって石を投げれば、すぐに傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)や器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)などに問われることとなりますが、嫌がらせを行う側の手法も巧妙になりつつあるようです。
例えば外出するフリをして、前の道を通過しながら石を投げ込むなどの方法となります。
こうした場合ですと、犯人の特定が困難となりがちですから、投石行為を止めさせるためには、まず証拠を揃えることが最重要課題となるでしょう。
防犯カメラの設置や、時には探偵を雇うなどの方法で、バッチリ証拠を押えてから法的手段に訴えるべきです。
なお、実際に投石が身体に当たった場合には殺人未遂(被害状況が深刻な場合は15年の懲役もあり得る)などの罪に問われる可能性もありますから、加害者側は一生を棒に振る可能性があることを認識するべきでしょう。
因みに、民事訴訟によって破壊された建物や設備の修理代金や、慰謝料を請求することも可能です。
敷地への侵入
嫌がらせを行うためには、他人の敷地に踏み込まねばならない場合も多いものです。
玄関先に汚物を撒いたり、自転車や自動車のタイヤをパンクさせたりと、多くの嫌がらせパターンで、敷地への立ち入りは行われるでしょう。
こうしたケースにおいては、「住居侵入罪(懲役3年以下又は10万円以下の罰金)」にて相手を訴えることが可能となります。
住居侵入罪というと、建物に侵入しなければ成立しない様にも思えますが、敷地内に入っただけでも適用されますから、覚えておいて下さい。
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いたずら電話
いたずら電話は古くから存在する嫌がらせの手法となります。
近年では電話機・携帯電話の迷惑電話対策機能や非通知着信拒否設定などが充実して来ているため、被害件数は減りつつあると言われていますが、現実にはまだまだ被害を被っている方も多い様です。
いたずら電話については、都道府県ごとに定める「迷惑防止条例(罰則は行政によって異なる)」に規定されているケースが多いため、これを根拠に対抗するのがベストな手段となります。
また、度重なる電話に精神的な被害を受けた場合には「傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」が適応されますし、暴言を吐いた相手は「侮辱罪(拘留又は科料)」や「脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)」に問われる可能性があるでしょう。
但し、少々厄介なのは出前などの送り付けて来るケースとなります。
もちろん、注文をしていない者と、デリバリーを行った業者間には契約関係が成立していませんから、料金を支払う義務はありませんが、直接被害を受けていない以上、相手に対して法的手段を執ることは困難です。
しかしながら、嘘の注文を受けたデリバリー業者は「威力業務妨害罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」にて、相手を告訴することが出来ますから、業者に対して法的処置を執るように勧めるのも一つの方法でしょう。
ピンポンダッシュ
さて続いては、ピンポンダッシュという嫌がらせについて解説してみたいと思います。
ピンポンダッシュというと、嫌がらせというよりは「いたずら」という雰囲気が強くなるかと思いますが、悪質なものとなると深夜に何度もインターフォンが押されるケースもありますから、決して軽視は出来ません。
また、「ピンポンダッシュを罰する法律なんてあるの?」と思われてしまいそうですが、実はこの行為は「軽犯罪法違反(1日以上30日未満の拘留又は1000円以上1万円未満の科料)」の違反になる可能性がありますし、悪質な場合には「迷惑防止条例(罰則は行政によって異なる)」で罰せられることになるでしょう。
なおピンポンダッシュが原因で住人が不眠症になってしまった場合には、「傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」に問われることも有り得ます。
中傷ビラ
こちらも昔から存在している嫌がらせの手段となりますが、近年ではインターネットの掲示板などを利用しての誹謗中傷行為が増えているようです。
中傷ビラを配布したり、街中に貼り付ける行為は名誉毀損罪が適応される可能性があり、その刑罰は3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金というものになります。
但し、名誉毀損罪には一定の事実(情報)が示されていることが要件となりますから、「●●氏は浮気をしている」等の内容であれば適応が可能となりますが、「●●氏はバカだ」なんて場合には名誉毀損にはならず、侮辱罪(拘留又は科料)が適応されることになるでしょう。
因みに無許可で電柱などに張り紙をする行為は「軽犯罪法違反(1日以上30日未満の拘留又は1000円以上1万円未満の科料)」や「迷惑防止条例(罰則は行政によって異なる)」で罰せられる可能性もあります。
なお名誉毀損罪については、中傷ビラ等の攻撃対象となった人物が社会的に影響力の強い人間であり、ビラに書かれた内容が事実であった場合には、罪に問われないケースもありますから、この点には注意が必要です。(芸能人や政治家のスキャンダルを記事にした雑誌社が罰せられないのと同様)
ペットに対する攻撃
そして最後にご紹介するのが、飼っている犬や猫などのペットに対する嫌がらせとなります。
無抵抗な動物に対する虐待行為は許し難いものがありますが、実際に嫌がらせの手段として用いられることがあるのも事実です。
なお、こうした行為を行った者に対しては、動物愛護法の規定により2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられることになるでしょう。
但し動物愛護法は、犬や猫など愛護動物と定められた生き物のみが対象となりますから、ハムスターや熱帯魚といった生き物については器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)によって裁かれることとなります。
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嫌がらせに対処する法律知識まとめ
さてここまで、嫌がらせに対処するための法律知識をお届けして参りました。
モラルの高さには定評があった我が国ですが、ご紹介して来た様な「卑劣な嫌がらせ行為」が横行する社会となってしまったのは、実に嘆かわしい限りです。
そして、こうした乱れた風紀の乱れを糾すためにも、嫌がらせをする不届き者に屈することなく、法による断固たる対処を行っていくべきであると考えます。
本ブログの記事が日本の風紀を糾す一助となれば、この上ない喜びです。
ではこれにて、「嫌がらせに対処する法律知識をお届けします!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
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