強烈なアスファルトの照り返しと、賑やかなセミの声が響き始めると、人々は自然と海に足を運ぶものです。
灼熱のビーチにパラソルを開き、水着で海に飛び込む瞬間は、大人でも心躍るものですし、お子様がいらっしゃれば、どんなに仕事で疲れていても「行きたくない」なんてセリフは吐けないことでしょう。
この様に夏のレジャーの代名詞でもある海水浴は、何時の時代も人々から愛され続けて来た最強のレクリエーションとなりますが、実は「様々なトラブルに巻き込まれる可能性を秘めたリスキーな遊び」という側面も有していることをご存知でしたでしょうか。
そこで本日は「海水浴での注意点を法律的に解説致します!」と題して、夏のビーチに潜むリスクについて法律的な視点からご説明をして参りたいと思います。
スポンサーリンク
ゴミのポイ捨て
海水浴のために浜辺を訪れた際に、必ず目にするのがビーチに放置されたゴミたちです。
煙草の吸殻に、空き缶やお弁当の容器、また酷いケースでは壊れたパラソルやバーベキューコンロ等が放置されているいることもありますよね。
さて、こうした砂浜への不法投棄には一体どんな罰則があるのでしょう。
まず、煙草のポイ捨てや空き缶の放置など、比較的ライトな不法投棄に関しては軽犯罪法という法律が適応されることになり、罰則は「1日以上30日未満の拘留又は1000円以上1万円未満の科料」となります。
こんなお話をすると、「それ程重い罪では無いのだね」なんて思われるかもしれませんが、社会的には前科として扱われるれることになりますので注意が必要です。
そして、バーベキューコンロの投棄など悪質な行為については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称・廃棄物処理法)という法律が適用される可能があります。
この廃棄物処理法の場合には、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金(法人の場合は3億円以下の罰金)という非常に重い罰則が用意されていますから、海水浴の後のゴミは必ず持ち帰るようにしたいものです。
遊泳禁止エリアについて
シーズン真っ盛りの海水浴場は多くの客で溢れ返り、正に「いも洗い状態」の場合も珍しくありませんが、ふっと海岸線に目を配れば、人っ子ひとりいないエリアを見付けることが出来る場合もあるでしょう。
そして、こんな場所を見付ければ、ついつい海に飛び込みたくもなるものですが、周囲に「遊泳禁止」の警告がないかをしっかり確認しておくべきです。
遊泳禁止区域で泳ぐ行為は、前項でもご紹介した軽犯罪法の違反行為となりますし、地域によっては遊泳禁止区域を条例で定めていることもありますので注意が必要でしょう。
なお、条例違反というと罰則も軽そうなイメージがあるかもしれませんが、行政によっては5万円以下の罰金などそれなりのペナルティーが定められているケースもありますから、決して甘く見ることは出来ないのです。
バーベキューや花火
夏の砂浜は人々の心を開放的にするものですから、海水浴に来たついでに「バーベキューや花火を楽しみたい!」と考える方も多いはずです。
そして、バーベキューとなれば冷えたビールなども恋しくなるものですが、こうした行為にも注意が必要な場合があります。
こちらも条例で定められているケースが殆どですが、直火の禁止(コンロを使用すればOKという地域も多い模様)や夜間の火気の使用を制限している行政は少なくありません。
また、飲酒や大音量で音楽をかける行為も禁止している海水浴場が登場し始めているようです。
なお、違反した場合の罰則については「厳重注意」程度の場合が多いようですが、エリアによっては5~10万円の罰金を科せられることもあるようですから、注意が必要でしょう。
盗撮や覗き
海水浴を楽しむのに、服を着たままという訳にも行きませんから、当然水着に着替える訳ですが、こうした場所では覗きや盗撮といった犯罪に手を染める馬鹿者どもも増えて来るものです。
これらの犯罪は地域ごとに定められている迷惑防止条例によって罰せられることとなり、場所により罰則も異なりますが、1年以下の懲役または100~200万円以下の罰金というのが量刑の相場でしょう。
因みに自宅の風呂場などを覗かれた場合には、軽犯罪法違反となりますが、海水浴場は公共の場となりますから、迷惑禁止条例の範疇となるのです。
※盗撮やのぞきに関する詳細は過去記事「プライバシーと法律について考えます!」をご参照下さい。
スポンサーリンク
遊泳マナーについて
さて、ここまでは海水浴といっても、主にビーチでの問題を取り上げて来ましたが、海の中に入っても守るべきルールは少なくありません。
若い友人同士で海に行くと、水の中でプロレス技を試してみたり、泳げない者を無理やり沖に連れ出すなどの行為が行われがちですが、ここで万が一事故が起きれば、当然法的な責任を問われることになるでしょう。
もちろん海に遊びに来て、故意に人を傷付けようという人は少ないでしょうが、じゃれ合った拍子に手や足が他人に当たって怪我をさせた場合にも、過失致死傷罪(30万円以下の罰金又は科料)や重過失致死傷罪(5年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金)が成立する可能性は充分にあります。
また刑事上の責任とは別に、民事上の責任(損害賠償等)も発生して来ますから、どんなに浮かれても理性ある行動をして頂きたいものです。
※意図せず他人に怪我等を負わせてしまったケースについては、過去記事「過失傷害に関する法律問答をお届け!」にて詳しく解説しておりますので、ご興味のある方はこちらをご参照下さい。
貝やウニの採集も要注意
久々の海を目の前にして、一頻りはしゃいだ後には、水中に潜む生き物などが気になって来る方も多いはずです。
足で海底を探れば、カニや貝といった獲物を発見できることもあるでしょうし、近年ではテレビのバラエティー番組の影響から、モリなどを持ち出す方も増えていると聞きます。
しかしながら、海水浴における生物の採取には少々注意も必要です。
お聞きになったことがある方もおられるかと思いますが、魚介類の中には漁業権により採取が禁じられているもの が存在します。
どんな生物に対して漁業権が設定されているかについては、地域によって異なりますが、ウニやイセエビ、タコやサザエ・アワビ、海藻類は注意すべきでしょう。
また、採集の対象のみならず、採集方法自体にも規制が設けられているケースも多く、使用するモリの種類や、貝を獲る道具についても注意を払う必要があります。
因みに漁業権を侵害した際に問われる罪は、漁業法143条違反(20万円以下の罰金)または漁業調整規則違反(罰則の内容は地域によって異なりますが、厳しいエリアでは1年以下の懲役または50万円以下の罰金というペナルティーが定められているケースも)となるでしょう。
なお、犯行現場を発見された場合には、通常の刑事事件の流れと同じく、逮捕・起訴と手続きが進んで行くことになりますから、社会生活にも大きな影響が出ることを覚悟するべきです。
※漁業権に関する詳細は別記事「釣りの禁止行為と法律について解説致します!」をご参照下さい。
救命行動について
海水浴は非常に楽しいイベントですが、海には多くのリスクが潜んでいますから、時には溺れて意識を失っている方を見掛けることもあるはずです。
もちろん、こうした場面に出くわした場合には、まず救急車を呼ぶべきですが、溺れた方が既に心肺停止の状態となっている際には、ただ傍観している訳にも行きません。
そしてここで必要となって来るのが心肺蘇生などの処置となりますが、一瞬頭をよぎるのが「もし蘇生に失敗したら、どんな責任を負わされるのだろう・・・」なんて想いですよね。
実は法律は、こうした懸念が救命活動の実施を妨害することがないように、一定のルールを定めています。
まず、過失致死傷罪など刑事上の責任については、緊急避難(緊急時のやむ得ない行動については罪に問わないという考え方)によって、免責となる可能性が高いでしょう。
また後遺症が残ったり、亡くなってしまった場合に、遺族から損害賠償を請求される民事上の責任についても、民法698条(緊急事務管理・命に係わる事態では、民事上の責任が問えないという規定)が適用されることになります。
但し、民事の場合も刑事の場合も、手当てをした者に重大な過失(救命の方法が完全に間違っていた等)や故意(ワザと方法を間違える等)の場合には、罪に問われる可能性もありますから、この点だけは注意をするべきです。
なお、こんなお話しをすると「やっぱり心肺蘇生にはリスクが伴うのね」と思われてしまいそうですが、重大な過失と認められるケースは非常に稀ですから、臆せず人命を優先するべきでしょう。
むしろリスクを恐れ、怪我人を放置する方が、後々責任を問われる可能性は遥かに高くなりますから、勇気をもって人命救助に当たるべきだと思います。
スポンサーリンク
海水浴での注意点まとめ
さてここまで、夏のレジャーの代表格である海水浴における法律的なリスクについてお話しして参りました。
広い海と青い空は、人の心をストレスから解放してくれますが、開放的になり過ぎると様々な危険をしょい込むことにもなりかねませんので、充分にご注意頂ければと思います。
ではこれにて、「海水浴での注意点を法律的に解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
スポンサーリンク