誰もがその当事者になりたくないのが、交通事故というアクシデントですよね。
しかしながら、どんなに自分が注意していても、事故という不幸は降り懸かって来るものですし、実際に被害者や加害者の立場になってしまったら、「この後何が起こるのだろう」と非常に不安になることでしょう。
そこで本日は、「交通事故解決の流れを解説致します!」と題して、交通事故発生から事後処理完了までの流れを解説してみたいと思います。
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事故後の流れを解説
さて、早速交通事故後の流れを解説してみたいと思いますが、一言で事故といってもそのパターンは様々なものがあります。
大きな事故で加害者側の過失が大きく、被害者が大怪我をした場合などは、その場で逮捕されて拘留される場合だってありますが、今回はこうした重大事故ではなく、相手が軽い怪我をした程度の事件を対象にご説明を行って来たいと思います。
事故発生
今回例題に挙げる事故は、信号のない交差点での自動車同士の衝突事故、そして加害者が一時停止無視を犯しており、被害者は軽いむち打ち症を訴えてというケースにしましょう。
また現実には非常にレアでしょうが、互いに保険会社を利用せず、当事者同士が話し合いのみで問題解決を行うものとします。
さて、とある街の小さな交差点で衝突事故が発生します。
どちらともなく警察へと通報を行い、警官が現場に到着しました。
ここでまず行われるのは、警察による実況見分となります。
加害者は一時停止の標識を見落とし、被害者の車に衝突。
被害者の自動車は大破しましたが、幸い一人で運転しており首が痛いと訴える程度の怪我で済んでいます。
まずは被害者・加害者が別々にパトカーに乗せられ、事故の内容について調書を取られ、事故当時の状況を警察が確認しました。
程なくして、警察より実況見分調書が作成され、加害者・被害者共に署名をさせられます。
事故当時の状況に関して、双方大きな意見の食い違いはなく、「今後のことはお互いに話し合って行こう」ということで、互いに事故現場を後にします。
被害者からの示談条件提示
さて事故から数週間後、被害者より加害者に電話連絡が入ります。
被害者によれば、今回の事件は人身事故扱いにはせず、示談で話を付けたいとのこと。
示談の内容については、むち打ち症の治療に要した治療費や交通費、事故の当日と翌日仕事を休むことになったので、その休業補償、大破した自動車の修理費並びに慰謝料を支払って欲しいというのです。
加害者的にも、支払う賠償金の項目ついては異論はありませんでしたが、問題はその金額が200万円という法外なものだったことには納得が行きません。
なお、被害者が主張する200万円の内訳は、
- 治療費20万円
- 交通費1万円
- 休業補償2万円
- 自動車の修理費147万円
- 慰謝料30万円
となっていました。
確かに被害者が乗っていたい自動車は年代物の高級外車でしたが、147万円の修理費はあまりに法外です。
加害者からの賠償金交渉
被害者から提示を受けた賠償金額に納得のいかない加害者は、早速ネットや書籍などを頼りに、自分が支払うべき賠償額の検討に入ります。
まず問題なのは、賠償額全額を自分が支払うように求められている点です。
交通事故の過失割合事例などをみれば、今回の事故の責任割合は加害者8・被害者2で疑いの無いところ。(過失割合の詳細については「交通事故の過失割合の決め方について解説!」の記事をご参照下さい)
そうなれば、200万円の賠償金の内、20%分は支払う義務がないはずです。
また慰謝料も通院の回数から考えて高額過ぎる様ですし、自動車修理代に至っては>同じ年式の中古車が100万円以下で購入可能となっています。
そして、こうした納得の行かない点を、被害者へと投げかけてみることにします。(賠償金の算出基準については過去記事「交通事故の損害賠償について解説致します!」をご参照下さい)
ここで示談が成立した場合
さて、ここで加害者が自分の過剰請求を認め、話し合いがまとまれば、後は示談書の取り交わしを行い問題は解決となります。
なお、示談書の内容や書き方の注意点については、過去記事「交通事故の示談書の書き方を解説致します!」をご参照下さい。
そしてここで示談が成立しなかったケースについては、次の段階に進むこととなります。
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交通事故調停へ
さてこの後も、何度となく被害者との打ち合わせを繰り返した加害者でしたが、被害者は頑としてこちらの提示額を呑もうとはしません。
「このままでは拉致が空かない」と焦る加害者の元に、裁判所から調停への呼び出し状が届きます。
民事訴訟のルールでは、調停を行わずとも一気に訴訟に踏み切ることが出来ますが、どうやら被害者はまずは調停にて問題解決を図ろうと考えている模様。
また、調停への出席を理由もなく拒めば、科料の支払を命じられますので、大人しく調停に出席することにする加害者でした。
調停では調停委員や裁判官が同席して、過去の事故事例などを示し、加害者と被害者が和解出来るように様々なアドバイスを行ってくれました。
ここで調停が成立すれば
そしてここで加害者と被害者の和解が成立すれば、調停調書にその内容を記録して調停は完了となります。
なお、この調停調書にて「加害者が被害者に●●●万円の賠償金を支払う」という合意が記されれば、その調書の内容は裁判でなされる判決と同等の効力を持つことになり、これに違反した場合には即時強制執行を受けることとなるのです。
但し、ここで調停が不調に終われば、いよいよ民事訴訟へと話が進んで行くことになるでしょう。
民事訴訟へ
さて、調停が不調に終わり、被害者の要求と加害者の慰謝料支払の意志が全く歩み寄れない場合には、民事訴訟へと舞台は移って行きます。
被害者は希望の賠償金を請求するべく地域を管轄する地方裁判所に訴え出て、これが受理された後、加害者に対して訴状が特別送達にて送られて来ました。
加害者は弁護士に相談の上、送られて来た答弁書に「否認」する旨を記して、提出しました。
そして、訴訟が開始され、数回に渡る口頭弁論の末、ついに判決が言い渡されます。
判決では「加害者は被害者に対して150万円の賠償金を支払うこと」が命じられましたが、これに納得の行かない加害者は控訴を行い、高等裁判所での審理となりますが、結果的に控訴は棄却されてしまいます。(民事訴訟の詳細については過去記事「民事訴訟の流れを解り易く解説致します!」をご参照下さい)
判決を受けて
さて、ここで加害者が判決に従い事故の賠償金150万円を被害者に支払えば、この事件は解決となります。
ただ、それでも加害者が支払いを拒めば、被害者は強制執行という手段で、慰謝料の回収を行うことになるでしょう。
強制執行
訴訟の結果、賠償金の支払いを命じる判決が出ているにも係らず、これを支払わない加害者に対して、被害者は強制執行を行うことを決意。
裁判所にその旨を訴え出て、強制執行の準備を進めて行きます。
そして加害者の元には、送達通知・差押命令が届けられ、銀行に預けてあった預金や、給与の一部を差押えられることで、執行は完了します。
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交通事故の流れまとめ
さてここまで、交通事故発生から、示談、調停、裁判に至るまでのプロセスをご説明して参りました。
今回ご紹介した様に、強制執行まで行ってしまうケースは殆どありませんが、「最悪はこうなる」という意味でご理解頂ければと思います。
交通事故に際して、加害者と被害者の意見が食い違うことも良くありますが、どの段階を「落とし処」とするかの判断を是非とも誤らない様にして頂ければ幸いです。
ではこれにて、「交通事故解決の流れを解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
参考文献
(有)生活と法律研究所編(2015)『交通事故の法律知識』自由国民社 368pp ISBN978-4-426-11950-8
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